事業計画老人ホーム編

現代日本は高齢化が進行しており、老人施設に対する需要が増加してきています。この需要に応じて、有料老人ホーム(以下、単に「老人ホーム」)などの介護事業の新規参入の動きが活発になりました。現在は、多少その動きも収まってきましたが、まだまだ活発な業界であると言えるでしょう。これを機に、老人ホームの運営など検討されるのはいかがですか?

→70歳までに老人ホームについて考えておきたいポイント

老人ホームと介護施設との違い

介護施設とは、その名の通り「要介護者の老人」が対象となっています。一方、老人ホームは、「自立的なシニア」のための施設です。老人ホームは、「老人福祉法第29条」に明確に定義されています。介護施設は、国の社会福祉政策の影響が大きいと言われているため、経営は国の方針に大きく傾くことになるそうです。

そのため、ここでは、特に老人ホームの運営について取り扱っています。

老人ホームの運営

では、具体的に、老人ホームではどのように収益を出すのでしょうか。利益の収支は「報酬」ー「コスト」で求めることが出来ます。この「コスト」部分は、大体が必要経費であることが多いです。管理費、維持費、人件費などを指します。

また、入居者の健康状態によっては、介護の負担が増えることになります。そのため、「コスト」部分を削るとサービスに悪影響を与えることになり、なかなか削りにくいというのが現状です。

そこで、「報酬」の方を設定する必要があります。介護施設では設定できない入居料も、老人ホームの運営では設定することが出来ます。ただし、あまりに法外だと信用を失うので気を付けましょう。また、ここ数年で、住居型ではなく、在宅型の訪問介護サービスの需要が大きく増えています。

地域によっては介護サービスは飽和状態であり、これ以上の新規参入は必要としない状況となっています。そうしたなかで、次世代型の介護サービス体制として、在宅型介護サービスが有力視されています。

老人ホーム設立の際の注意点

老人ホームも設立の際には、市区町村自治体と事前に相談しなくてはなりません。しかし、昨今の介護業界では介護保険料を節約するために、設立が認められないケースが増えています。そのため、新規参入が横ばいに見えるのですが、それは自然な推移ではありません。

業界が需要の増加の仕方と対応できていない場合、そうした規制によって守られるものは大きいです。自治体の指示には素直に従うようにしましょう。新規に設立する場合には、ほかの施設との差別化を図り、メリットをアピールできるかどうかがポイントになってきます。

老人ホームの運営

さて、運営が流れに乗ってきた段階となると、事業拡大や多店舗展開へ関心が向くかと思います。もちろん、介護事業も多店舗展開が有利な業種と言われていますが、ここでは「地域包括ケアシステム」の観点から、老人ホームの運営は「地域密着型」を推します。

「地域包括ケアシステム」とは、「2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援の一体的な提供を目指すシステム」のことです。

「地域密着型」では、他所の入居者を獲得するのは難しくなりますが、その地域の住民から固定客が見込めます。一定の地域に根ざした運営は、安定したものになることが多いです。その場合は、地域住民との交流も大切になってきます。

これからの業界の見通し

今後しばらくは、介護業界の需要は増加し続けるという予測が主流です。

65歳以上の高齢者数は、2025年には3,657万人となり、2042年には3,878万人でピークを迎えるとされています。

しかし、その時点では、働き手の不足が心配されています。これは介護業界に限った話ではありませんが、現段階でも人手不足が叫ばれているこの業界では、顕著に表れてくる恐れがあります。やはり、「魅力的な職場」として喧伝しにくい職場環境は、経営の上でかなり懸念材料になります。

収益構造がしっかりとしていて利益を得やすい反面、職場環境の整備に苦労するという難点は変化しないでしょう。一番の問題点は、働き手の確保です。働き手のやりがいを保証することが出来れば、安定した運営を目指すことが出来ます。

老人ホームに勤める

就業者の目線から、老人ホーム運営を見てみましょう。老人ホームは「自立的なシニア」のための施設ではありますが、介護施設としての機能も求められています。そこでは、過酷なことで有名な介護業界の一端としての問題点が多く挙げられます。

まずは、業務内容に魅力が見出しにくい点です。かなりハードな肉体労働が求められる上、排泄物の処理など、精神的にもしんどい作業が中心です。それに、高齢者相手の作業に生産性が感じられず、虚無感を抱きやすいです。

認知症の入居者からの暴力やわがままに我慢がならないという話もよく聞かれます。働き手に対するこまめなメンタルケアも必要経費と捉えなくてはならないでしょう。また、介護業界は「つぶしの効かない」業界であると言える点もあります。

ハードではありますが、作業自体は単純なものです。その作業は慣れれば誰でも出来る内容であり、働き手のスキルが育ちません。そのため、キャリアアップが難しく、将来の見通しも立てにくくなります。

事業計画にあたって、働き手の存在は無視できません。特に介護事業の運営には覚悟が必要です。

老人ホームの「アフターコロナ」

人類はコロナの大流行を経験し、「アフターコロナ」としてこれまでの生活様式から変化が起きています。そして、介護業界も例外ではありません。特に高齢者は感染症が重症化しやすい傾向にあるため、これまで以上に細心の注意を払わなくてはなりません。

そのため、これまで以上に不人気な業種になるでしょう。それに対して、賃上げやサービス量の上限を下げるなどの職場環境の整備が進められ、業界の魅力を底上げする取り組みが行われています。ただし、運営者にとっては厳しい状況に変わりなく、経営上の負担増は必至です。

需要の多い事業への選択眼を

老人ホームの運営を事業として捉える見方には、少々抵抗が生まれるかもしれません。それも、心の動きとしては自然なことだと思います。でも、だからこそ、需要を見定めた運営を行っていく事が求められるようになってゆくと思われます。

真剣な運営者が、真剣に需要を追うと、それだけで世のため人のためになっていくのです。需要を見定める心眼を持った事業計画こそ、事業者の社会的責務であると確信しています。